自信がないと思われがち?言葉を明確にする習慣で自己肯定感を高める
あいまいな言葉遣いは、時に話し手の意図をぼかしたり、責任を回避したりするために無意識のうちに使われることがあります。「たぶん」「〜かもしれない」「一応〜しておきます」といった表現がそれに当たります。こうした言葉は、受け手にとって情報が不明確になるだけでなく、話し手自身の自己肯定感にも影響を与える可能性があると考えられます。
言葉と自己肯定感の間には密接な関係があります。自分がどのような言葉を選ぶか、内面でどのような言葉を自分自身に語りかけるかが、自己評価や他者からの評価の受け止め方に影響を与えます。特に、常に言葉をあいまいにしてしまう習慣があると、自分自身の考えや判断に自信が持てない状態が固定化され、結果として自己肯定感が低下する可能性が指摘されています。
なぜ、あいまいな言葉遣いをしてしまうのか
あいまいな言葉遣いをしてしまう背景には、いくつかの心理的な要因が考えられます。
- 失敗や間違いへの恐れ: 断定的な表現を避けることで、後で間違いが判明した場合のリスクを減らそうとする心理が働くことがあります。
- 他者からの評価への不安: 自分の意見をはっきり言うことで、相手に否定されたり、反論されたりすることを恐れる場合があります。
- 責任の回避: 明確な約束や断定を避けることで、もしうまくいかなかった場合の責任から逃れようとする無意識の働きがあるかもしれません。
- 自己肯定感の低さ: 自分の考えや能力に自信がないため、断言することをためらい、あいまいな表現に頼る傾向が見られます。
これらの要因が複合的に絡み合い、あいまいな言葉遣いが習慣化してしまうと考えられます。
あいまいな言葉遣いが自己肯定感を下げるメカニズム
あいまいな言葉遣いが習慣化すると、自己肯定感に以下のような影響を与える可能性があります。
- 自己認識の不安定化: 自分の意見や判断を言葉にしないことで、自分自身が何を考え、何を感じているのかが不明確になり、自己認識が揺らぎやすくなります。
- 他者からの信頼感低下: 言葉があいまいだと、周囲からの信頼を得にくくなることがあります。これは「あの人はいつもはっきりしない」「自信がなさそう」といった評価につながり、その評価を内面化してしまうことで、さらに自己肯定感が低下する悪循環に陥ることがあります。
- 行動への消極性: 自分の言葉に責任を持たない、あるいは持てない感覚が強まると、新しい行動を起こすことへのハードルが高くなり、挑戦を避けるようになる可能性があります。これにより、「自分にはできない」という自己評価が強化されることが考えられます。
このように、あいまいな言葉遣いは単なる話し方の癖ではなく、自己肯定感と深く結びついた課題として捉えることができます。
言葉を明確にすることのメリット
言葉を明確にすることには、多くのメリットがあります。そして、これらのメリットは、巡り巡って自己肯定感の向上に繋がると考えられます。
- コミュニケーションの円滑化: 意図や事実を明確に伝えることで、誤解が減り、相手とのスムーズなやり取りが可能になります。
- 信頼性の向上: 自分の言葉に責任を持つ姿勢は、周囲からの信頼を得やすくなります。職場では、指示や報告が明確であることは、仕事の効率化やチームワークの強化にも繋がります。
- 自己肯定感の向上: 自分の考えを整理し、それを明確な言葉で表現できるという経験は、「自分には考えがある」「自分の言葉には価値がある」という感覚を育み、自己肯定感を高めることに繋がります。また、明確な言葉で行動を約束し、それを実行することで、「自分はできる」という成功体験を積み重ねやすくなります。
- 行動力の向上: 自分の目標や意思を明確な言葉で設定することは、行動への動機付けとなり、一歩を踏み出しやすくなります。「〜できたらいいな」ではなく「〜をいついつまでにやる」のように言葉にすることで、具体的な行動計画を立てやすくなります。
具体的な「明確な言葉遣い」への言い換え例
日常や職場で意識できる、あいまいな言葉遣いを明確な言葉に言い換える例をいくつかご紹介します。
| あいまいな言葉遣い | 明確な言葉遣い | ポイント | | :-------------------------------------- | :------------------------------------------------- | :------------------------------------------------- | | たぶん大丈夫だと思います。 | 大丈夫です。 / 心配な点は〇〇ですが、対応可能です。 | 根拠や状態を具体的に伝える。 | | 〜した方がいいかもしれません。 | 〜することをお勧めします。 / 〜しましょう。 | 提案なのか、意思決定なのかを明確にする。 | | 一応報告しておきます。 | 〇〇についてご報告します。 | 報告の内容と目的をはっきりさせる。 | | ちょっと考えさせてください。 | 〇〇までに返信します。 / 〇〇について確認します。 | 応答の時期や次のアクションを具体的に伝える。 | | なんとなく調子が悪いです。 | 〇〇の機能に問題があります。 / 〇〇の作業が遅れています。 | 具体的な症状や状況を言葉にする。 | | 頑張ります。 | 〇〇を達成します。 / 〇〇まで進めます。 | 努力の方向性や具体的な目標を示す。 | | (提案に対して)うーん、どうでしょう? | 〇〇という点が懸念されます。 / 〇〇については賛成です。 | 感じたことだけでなく、具体的な理由や意見を伝える。 | | 〇〇になる可能性があります。 | 〇〇のリスクがあります。 / 〇〇が起こる見込みです。 | 可能性の度合いや状況を具体的に示す。 |
これらの言い換えは、状況によって最適な表現が異なりますが、大切なのは「何を、なぜ、どのように伝えたいのか」を自分自身で整理し、それを言葉に乗せる訓練をすることです。
明確な言葉遣いを習慣化する方法
あいまいな言葉遣いを改め、明確な言葉遣いを習慣にするためには、意識的なトレーニングが必要です。
- 「あいまい言葉」に気づく: まずは自分がどのような場面で、どのようなあいまいな言葉(たぶん、なんとなく、〜かも、一応など)を使っているかを意識的に観察します。
- 短い応答から練習する: 日常の簡単な質問に対する返事から練習を始めます。「たぶんそうだと思います」ではなく「はい、そうです」や「いいえ、違います」、「〜かもしれません」ではなく「〜です」や「〜ではありません」と、まずは断定的な表現を使ってみる練習をします。
- 主語と述語を意識する: 自分が何を考え、何を伝えたいのか、主語(誰が/何が)と述語(どうする/どうである)を明確にしてから話す・書くように心がけます。
- 語尾を意識する: 「〜と思います」「〜かもしれません」で終わらせるのではなく、「〜です」「〜と判断します」「〜と結論づけられます」といった、より明確な語尾を使う練習をします。ただし、断定が難しい場面では、「現時点では〜です」「〇〇という情報に基づけば〜です」のように、情報の根拠や条件を添えることで明確にすることも可能です。
- 立ち止まって言葉を選ぶ: 言葉にする前に一瞬立ち止まり、「これで意図が正確に伝わるか」「あいまいな表現ではないか」を自問自答する習慣をつけます。
- 振り返りを行う: 会議の後やメールを送った後などに、自分の言葉遣いを振り返ります。「もっと明確に伝えられた部分はなかったか」と客観的に見てみることで、次の機会に活かすことができます。
これらの習慣化は、初めは意識して行う必要がありますが、継続することで無意識のうちに明確な言葉を選ぶことができるようになります。
まとめ
あいまいな言葉遣いは、一時的に心地よいかもしれませんが、長期的に見ると自己肯定感を低下させる可能性があります。自分の考えや意図を明確な言葉で表現しようと努めることは、コミュニケーションの質を高めるだけでなく、自分自身の内面を整理し、「自分には確かに考えがある」「自分の言葉には重みがある」という感覚を育むことに繋がります。
言葉を変えることは、自己肯定感を高めるための具体的な一歩です。今日から、少しずつでも「明確な言葉遣い」を意識してみてはいかがでしょうか。その小さな積み重ねが、きっと自信へと繋がっていくと考えられます。