周りの期待に振り回されない自分を作る:言葉で築く「自分軸」の保ち方
周りの期待に応えすぎて疲れてしまうことはありませんか
職場で、あるいはプライベートな人間関係の中で、「周りの期待に応えなければ」と強く感じてしまうことは、多くのビジネスパーソンが経験することかもしれません。真面目さや責任感ゆえに、他者からの評価や期待を過度に気にしてしまい、自分の本音や体力的な限界を後回しにしてしまう。その結果、疲弊し、自分自身の価値を見失いがちになる状況も考えられます。
このような時、自己肯定感が揺らぎやすくなります。他者の基準で自分を評価し、期待に応えられないと「自分には価値がないのではないか」と感じてしまうためです。しかし、自分自身の内面に目を向け、「自分軸」を明確にすることで、この状況は変化し得ます。そして、その「自分軸」を築き、保つために強力なツールとなるのが、「言葉」です。
ポジティブな言葉遣いは、単に明るく振る舞うことだけを指すのではありません。それは、自分自身の内面を正確に認識し、肯定的に捉え、他者の言動と自分自身を適切に切り分けるための、意識的な言葉の選択と使用を意味します。この言葉のチカラを活用することで、周りの期待に振り回されず、無理なく自分らしいペースで自信を育むことができると考えられます。
自分軸を保つために言葉が果たす役割
自分軸とは、他者の評価や社会の常識に過度に囚われず、自分自身の価値観や基準に基づいて物事を判断し、行動する姿勢を指します。自己肯定感が低い状態では、この自分軸が揺らぎやすく、他者の言動に一喜一憂したり、無理をしてでも周囲に合わせようとしたりする傾向が見られます。
ここで言葉が果たす役割は重要です。私たちは日頃、頭の中で様々な考えや感情を巡らせています。これを「内的な対話(セルフトーク)」と呼ぶこともあります。このセルフトークや、実際に発する言葉がネガティブな内容に偏っていると、「自分はダメだ」「〜しなければならない」といった思考が強化され、自分軸から離れて他者の基準に引っ張られやすくなります。
一方、意識的にポジティブで建設的な言葉を選ぶことで、内的な対話の質が変化します。自分の感情や考えを客観的に捉え、他者の期待と自分の状態を区別する手助けとなります。これにより、自分自身の本音や限界を認識しやすくなり、無理な要求や期待に対して適切に対応できるようになるのです。自分自身を言葉で肯定的に扱うことで、内側から自己肯定感が育まれ、自然と自分軸が強化されると考えられます。
自分軸を保つための言葉遣い:具体的な実践例
周りの期待に振り回されず、自分軸を保つための言葉遣いには、いくつかの具体的なアプローチがあります。これらは特別なスキルを必要とするものではなく、日々の生活の中で少しずつ意識することで取り入れられます。
1. 自分の内面の言語化:感情や思考を言葉にする
漠然とした不安や疲労感、他者への不満などをそのままにしておかず、言葉にして認識することが第一歩です。「自分は今、〇〇と感じているのだな」「これは〇〇について、自分がこう考えているということだな」のように、客観的に言葉にしてみます。
- 実践例: 「なんだかモヤモヤする」→ノートに「今、Aさんからの頼まれごとに対して、本当に自分にできるのか不安を感じている」と書いてみる。これにより、漠然とした不安が具体的な感情として捉えられ、その感情にどう対処するかを考えられるようになります。
2. 他者の期待と自分を切り分ける言葉を使う
他者の期待や意見を、自分自身の人格や能力に対する絶対的な評価と捉えないための言葉遣いです。
- 実践例: 上司から難しい仕事の追加を頼まれた際、内心「引き受けたくない、でも断れない」と感じてしまう状況で、頭の中で「上司は自分の能力を高く評価してくれているのかもしれない。それはありがたいことだ。でも、今の自分のタスク量では期日までに完了させるのは難しいだろう」と整理します。そして、「〇〇部長がこの件に期待してくださっているのは理解いたしました。ありがとうございます。ただ、現在抱えている業務量と〇〇の納期を考えると、少し調整が必要かもしれません」のように、相手の期待を尊重しつつ、自分の状況を伝える言葉を選びます。これは断る言葉というより、自分の状況を正確に伝える言葉であり、自分を追い詰めないための表現です。
3. 自分のキャパシティや限界を認める言葉
完璧を目指しすぎたり、自分の限界を超えて無理をしたりしないために、自分自身の状態を認める言葉を使います。
- 実践例: 仕事が立て込んでいる時に、「全部自分でやらなきゃ」ではなく、「今の自分には、この量とスピードで対応するのは難しい。誰かに相談するか、納期について調整をお願いする必要があるかもしれない」と心の中で認めます。そして必要に応じて、「恐縮ですが、この件についてどなたかにご協力を仰ぐことは可能でしょうか」のように、助けを求める言葉を選ぶことも、自分軸を保つためには重要です。
4. 自分自身への肯定的な言葉
他者の評価に関わらず、自分の努力や存在そのものを肯定する言葉を意識的に使います。
- 実践例: プレゼンがうまくいかなかった時、「どうして失敗したんだ」と自分を責めるのではなく、「準備はしっかりやった。次は改善点に注意しよう」「今回の経験から学んだことがある」のように、プロセスや学び、自分の努力に目を向ける言葉を選びます。また、特別なことでなくても、「今日も一日よく頑張った」「今のままで大丈夫」と自分に語りかけることも効果的です。
言葉のチカラで自分軸を築き、自信を育む
これらの言葉遣いは、すぐに完璧にできるようになるものではありません。しかし、日々の小さな意識の積み重ねが、自分自身の内面との向き合い方を変え、徐々に自分軸を確固たるものにしていくと考えられます。
自分軸が定まってくると、他者の期待や評価に過度に振り回されることが減ります。自分の価値基準で物事を判断し、自分の本音やキャパシティを大切にできるようになるため、無理な自己犠牲が減り、心身の疲労も軽減されることが期待できます。
そして、自分自身の内面を肯定的に扱い、自分のペースを大切にできるようになった時、外からの評価に依存しない、揺るぎない自己肯定感が育まれていくでしょう。言葉は、そのための最初の一歩であり、最も身近なツールです。
自分軸を保つ言葉を日々の習慣に取り入れることで、周りの期待に振り回されず、自分らしく輝くための土台が築かれるはずです。ぜひ、今日から意識してみてはいかがでしょうか。