他人の言葉に左右されない自分を作る、自己肯定感を守る言葉の習慣
他人の言葉によって、心がざわついたり、傷ついたりすることは少なくありません。特に、職場など日々多くの人と関わる場では、期待していた評価が得られなかったり、批判的な意見に触れたりする機会があるかもしれません。そうした言葉が積み重なることで、知らず知らずのうちに自信が揺らぎ、自己肯定感が低下してしまうこともあると考えられます。
しかし、こうした外部からの言葉の影響を和らげ、自己肯定感をしっかりと保つための方法があります。それは、「言葉のチカラ」を活用し、自分自身の内側で使う言葉や、言葉の受け止め方を変える習慣を身につけることです。
なぜ他人の言葉が自己肯定感に影響するのか
私たちの自己肯定感は、自分自身をどのように評価し、受け入れているかによって決まります。そして、この自己評価には、過去の経験や、他者からの評価、そして自分自身に向けられる「言葉」が深く関わっています。
他者からのネガティブな言葉に触れた時、私たちはしばしばその言葉を内面化し、「やはり自分はダメだ」「能力がないのかもしれない」といった否定的な自己評価に繋げてしまいがちです。これは、言葉が単なる音や文字情報ではなく、感情や意味を含んだ強力な影響力を持つためです。特に、疲れている時や、元々自信が持てないと感じている時は、こうした言葉の影響を受けやすくなる傾向があります。
自己肯定感を守る「言葉のバリア」とは
ここでご紹介したいのが、「言葉のバカラ」ではなく、「言葉のバリア」という考え方です。これは、他人の言葉に直接傷つくのではなく、自分自身の内側で言葉の受け止め方や、その後に続く自己対話を変えることで、心の平穏や自己肯定感を守る習慣を指します。
ポジティブな言葉遣いは、単に前向きなことを言うだけでなく、物事の捉え方を変え、困難な状況に対する立ち向かい方にも影響を与えます。自分自身に対して肯定的な言葉を使う習慣や、他人の言葉を客観的に捉え直す習慣は、揺らぎがちな自己肯定感を内側から支える強固なバリアとなり得ます。
実践編1:ネガティブな言葉への向き合い方を変える
他者から否定的な言葉を受けた際に、すぐに自己否定に繋げるのではなく、言葉の捉え方を意識的に変える練習をしてみましょう。これは、心理学でいう「リフレーミング」の考え方に通じる部分があります。出来事や言葉の枠組み(フレーム)を変えて捉え直すことで、違う側面が見えたり、新しい意味づけができたりします。
例えば、上司から「この資料は分かりにくいな」と言われたとします。 そのまま受け止めると「自分の資料作成能力は低い」と落ち込んでしまうかもしれません。
ここで言葉の捉え方を変えてみます。
- 事実と意見を分ける: 「資料が分かりにくい」は上司の「意見」であり、資料の「事実」の全てではないと考えられます。「どこが分かりにくいのか」という点を質問し、具体的な改善点に焦点を当てることで、「自分は能力が低い」という抽象的な自己否定から離れることができます。
- 意図を推測する: 上司はあなたを攻撃したいのではなく、資料の質を上げて仕事全体の成果を向上させたいのかもしれません。「より良い資料にするためのフィードバックだ」と捉え直すことで、建設的な視点を持つことができます。
- 部分と全体を分ける: 資料全体が否定されたわけではなく、「分かりにくい部分があった」と捉えます。「この部分は要改善だが、他の部分は良かったかもしれない」と考えることで、自己否定を部分的な評価に留めることができます。
このように、受け取った言葉をいったん立ち止まって分析し、異なる角度から捉え直すことで、感情的な動揺を抑え、自己肯定感へのダメージを最小限に抑えることが期待できます。
実践編2:自分を肯定する言葉を育む習慣
他人の言葉に左右されないためには、自分自身を肯定する「内なる声」を強くすることが重要です。日常的に自分自身に対して肯定的な言葉をかける習慣を取り入れてみましょう。これは「アファメーション」と呼ばれることもあります。
- 「自分はできる」と口に出す、あるいは心の中で唱える: 新しいタスクに挑戦する前や、自信がないと感じる時に、「自分ならきっとできる」「一つずつクリアしていこう」といった言葉を自分に聞かせます。
- 小さな成功や努力を認める: 「今日のタスク、〇〇まで終わらせることができた。頑張った!」「難しい部分もあったけど、最後までやり遂げようと努力できた、えらい!」のように、達成したことや、努力したプロセスを言葉にして自分を褒めます。大きな成果だけでなく、日々の小さな一歩に目を向けることが大切です。
- 自分を受け入れる言葉を使う: 完璧でなくても大丈夫、というメッセージを自分に送ります。「今日はうまくいかなかったけど、次は改善できる」「これが今の自分の実力だ。ここから成長すればいい」のように、ありのままの自分を受け入れ、未来への可能性に焦点を当てる言葉を選びます。
こうした言葉は、最初はぎこちなく感じるかもしれませんが、繰り返すことで潜在意識に働きかけ、自己肯定感を内側から育むサポートとなります。
職場での応用:言葉の習慣がもたらす変化
職場における人間関係や業務上の困難に対して、言葉の習慣は有効なツールとなり得ます。
- 会議での発言: 発言する際に緊張する場合、「自分の意見は価値がある」「もし間違えても、学びになる」といった言葉を自分に言い聞かせます。たとえうまく伝えられなかったとしても、「伝える努力はできた」と自分を認める言葉をかけることで、次への意欲に繋がります。
- 評価面談: 厳しい評価を受けた場合でも、その言葉を感情的に受け止めるだけでなく、「成長のための具体的な課題が明確になった」と捉え直します。そして、「この課題を乗り越えるために、〇〇から始めてみよう」と、未来に向けた行動を促す言葉を自分にかけます。
- 同僚との対立: 意見の衝突があった際、「この状況で感情的にならず、冷静に対応しよう」と自分に言い聞かせたり、「相手には相手の考えがあるのだろう」と客観的に捉え直したりすることで、感情的な波を抑え、建設的な解決策を見つけやすくなります。
小さな変化から始めることの重要性
言葉の習慣を変えることは、一朝一夕にできることではありません。まずは、自分がどのような言葉に傷つきやすいか、自分自身にどのような否定的な言葉を使いがちかを観察することから始めてみましょう。そして、一つずつ、意識的にポジティブな言葉に言い換えたり、言葉の受け止め方を変えたりする練習を積み重ねていくことが大切です。
最初から完璧を目指す必要はありません。たとえ失敗しても、「また練習すればいい」「気づけただけで素晴らしい」と自分を励ます言葉を選んでみてください。小さな一歩が、やがて他人の言葉に左右されない、安定した自己肯定感を持つ自分へと繋がっていくと考えられます。
言葉は、良くも悪くも私たちの心に深く影響を与えます。他人の言葉に振り回されるのではなく、自分自身の言葉を意識的に選び、育むことによって、自己肯定感をしっかりと守り、仕事でもプライベートでも前向きな一歩を踏み出す力となるでしょう。